セール・アンド・リースバック取引とは
この講で学習すること
・セール・アンド・リースバック取引とは?
・セール・アンド・リースバック取引の会計処理方法(仕訳)
セール・アンド・リースバック取引とは
セール・アンド・リースバック取引とは、小難しそうなヨコ文字ですが、その文字のとおり、
(1)まず「セール」して(売って)
(2)そして「アンド」(次に)、「リースバック」する
取引です。
(1)何を「セール」するのか?
次に「リースバック」するわけですから、リースの対象となる資産、つまり固定資産です。
機械装置や備品など、購入して所有している固定資産を一旦売却して、売却資金を得られます。
(2)「リースバック」とは?
でも、不要になったから売却したわけではないんです。
使うんです。
売却先からリースしてもらって、リース料払って、使用し続けます。
つまり、購入して自前の資産だったものを、やっぱやめて、リースに変える手続きです。
なぜ、セール・アンド・リースバック取引なんてめんどくさいことするのか?
なぜこんなことするのか?
ぶっちゃけて言えば資金繰り(キャッシュ・フロー)です。
購入時にまとめて発生したキャッシュ・アウトを、耐用年数かけて少しずつ回収していくのが通常の固定資産の減価償却ですが、これでは投下した資金の回収に時間がかかります。
これがリースであれば、キャッシュ・アウトは、リース料として使用期間にわたって均等に発生します。
つまり、セール・アンド・リースバック取引は、一旦購入して資金を投下した固定資産について、売却して購入資金(の一部)を回収したうえで、リースに切り替えて、固定資産を使用し続けながら、キャッシュ・アウトをリース料に置き換えて均等化する方法というわけです。
セール・アンド・リースバック取引の会計処理方法~開始時
セール・アンド・リースバック取引の開始時の仕訳は、当該資産の売却(セール)の仕訳と、リース取引開始(リースバック)の仕訳の両方をすることになります。
【設例1】当社は所有している備品のセール・アンド・リースバック取引を行った。
当該リース契約はファイナンス・リース契約に該当する。
計算上端数が生じる場合はその都度四捨五入すること。
(会計期間4/1~3/31)
[対象資産]
取得原価40,000円、期首減価償却累計額8,000円、耐用年数5年、残存価額0円、償却方法は定額法
[取引の内容]
・売却価額は35,459円(現金受取)
・リース期間:X1年4月1日から4年間
・リース料:年額10,000円(毎期末日に現金払い)
・計算利子率:5%
以上について、X1年4月1日の仕訳をしなさい。
【セールの仕訳】
通常の固定資産売却の仕訳
(借)減価償却累計額 8,000
(借)現 金 35,459
/(貸)備 品 40,000
/(貸)固定資産売却益 3,459
のうち、貸方について「固定資産売却益」ではなく、「長期前受収益」になります。
もし、「固定資産売却損」になる場合(つまり売却額<簿価の場合)は、売却損ではなく、「長期前払費用」となります。
なぜ売却益ではなく長期前受収益なのか?
それは次項でタネ明かしです。
【リースバックの仕訳】
(借)リース資産 35,459
/(貸)リース債務 35,459
開始後の会計処理
セール・アンド・リースバック取引開始後は、通常のリース取引と同様に、リース料支払いと期末にリース資産の減価償却費計上の仕訳が発生します。
その際、長期前受収益(または長期前払費用)についても、整理が必要になります。
【設例2】
【設例1】に関し、X2年3月31日の仕訳をしなさい。
【リース料支払いの仕訳】
貸方現金1万円のリース料支払いですが、うち1,773円が利息分(=残債35,459×利率5%)、差し引き8,227円がリース債務元本分の返済です。
(借)支払利息 1,773
(借)リース債務 8,227
/(貸)現 金 10,000
【減価償却の仕訳】
(借)減価償却費 8,865
/(貸)減価償却累計額 8,865
・・・リース資産35,459÷4年
ここで忘れてはならないのが、開始時の仕訳で立てた「長期前受収益」
【長期前受収益償却の仕訳】
(借)長期前受収益 865
/(貸)減価償却費 865
なぜ、こんな仕訳になるのか?
もともと、この長期前受収益が発生したのは、所有物だった備品を「セール」したときの、「売却益」相当額なわけでした。
つまり、もともとの簿価(=取得原価-減価償却累計額)よりも「売却益」(=長期前受収益)分だけ高くリース資産・リース債務ともに計上しているので、その分だけもともとの簿価よりも高く、減価償却費が上乗せされているわけです。
その上乗せ分である長期前受収益を1年分(つまり1/4)だけ償却し(減らし)、減価償却費と相殺した格好です。
こうすることで、減価償却費は、8,865-865で、もともとの備品の簿価ベースになりました。
【セール・アンド・リースバックのまとめ】
■セール・アンド・リースバック取引とは、自家所有の固定資産を売却と同時にリース契約を締結し、固定資産に投下したキャッシュの一部を回収しリース契約に切り替えること
■セール・アンド・リースバック取引開始時の仕訳は、その名のとおり固定資産売却とリース取引開始の仕訳を合体
(借)減価償却累計額 XXX
(借)現金・未収入金 XXX
(借)(長期前払費用 XXX)
/(貸)固 定 資 産 XXX
/(貸)(長期前受収益 XXX)
+
(借)リース資産 XXX
/(貸)リース債務 XXX
■開始時以後は、リース料支払いと減価償却費、さらに長期前受収益(または長期前払費用)の仕訳
(借)支払利息 XXX
(借)リース債務 XXX
/(貸)現金預金 XXX
+
(借)減価償却費 XXX
/(貸)減価償却累計額 XXX
+
(借)長期前受収益 XXX
/(貸)減価償却費 XXX
または
(借)減価償却費 XXX
/(貸)長期前払費用 XXX
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